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【Architecture】データメッシュアーキテクチャの基本概念と従来データアーキテクチャの課題

最近、「データメッシュアーキテクチャ」という言葉を知りました。今後、何回かに分けてこのテーマについて記事を書いていく予定ですが、今回はその基本的な概念を紹介したいと思います。

一度にすべてを書くことができないのは、調べれば調べるほど簡単にまとめられる内容ではなく、まるで大学の卒業論文を何本か書くようなボリュームと複雑さがあるためです。そこで、少しずつ分けて紹介できればと考えています。

記事のポイント
  • データメッシュアーキテクチャの基本的概念
  • データメッシュアーキテクチャの提唱
  • データメッシュアーキテクチャが解決しようとしている従来型データアーキテクチャ(データウェアハウス、データレイクなど)の課題

データメッシュとは

データメッシュの考え方は、単なる技術的な話や新しいアーキテクチャのパターンではなく、データ管理に対するアプローチそのものです。 その本質は、データの所有権を分散させ、それをビジネスドメイン(事業領域)と整合させることで、大規模なデータ管理を実現する点にあります。 このアプローチは、従来のデータウェアハウスやデータレイクに代表される、中央集権的かつモノリシックなデータプラットフォームから脱却し、分散型のデータ管理を目指すものです。

データメッシュの提唱

データメッシュという概念は、2019年にThoughtWorks社のZhamak Dehghani氏によって初めて定義されました。彼女の提唱は、従来のデータプラットフォームが直面していた構造的な課題に対する解決策として示されたものです。

item.rakuten.co.jp

Dehghani氏の論文「How to Move Beyond a Monolithic Data Lake to a Distributed Data Mesh」では、中央集権型のアーキテクチャがもたらす根本的な問題を明確に指摘し、現代の分散アーキテクチャとドメイン駆動設計(Domain-Driven Design)の原則から着想を得た、新しいパラダイムを提示しています。

martinfowler.com

データメッシュの核心的な論点は、従来のデータの流れを根本から覆す点にあります。従来は、各ビジネスドメインで発生したデータを中央のデータプラットフォームに集約するというモデルが一般的でした。これに対し、データメッシュでは、各ドメインが自らのデータをホストし、利用しやすい形で直接データ消費者(コンシューマー)に提供することを前提としています。

この転換のポイントは、データに最も精通している人々――すなわちドメインの専門家たちが――データの所有権を持つことができる点にあります。これにより、データの品質、関連性、提供速度の大幅な向上が期待されます(※あくまで「期待」であり、実現できるかどうかは別の問題である点には注意が必要です)。

中央集権型アーキテクチャの課題

従来の中央集権型アーキテクチャ(データウェアハウスやデータレイク)は、必然的に中央集権的なデータ管理チームがボトルネックとなる構造を持つとされています。このため、データメッシュという考え方が生まれる背景には、以下の3つの問題点が存在します。

  • データ管理チームの過負荷
  • 業務を知らないデータ管理チーム
  • 所有権と品質の問題

データ管理チームの過負荷

すべてのデータに関する要求、変換処理、そして提供は、専任のデータ管理チームを経由しなければなりません。もしデータニーズが比較的小規模な組織であれば別ですが、企業が成長し、取り扱うデータの量や種類、ユースケースが増加するにつれて、この中央チームは必然的に過負荷に陥ります。その結果、データ提供までのリードタイムが長くなり、ビジネスの変化に対する反応が遅れ、事業部門が求めるスピード感に追いつけなくなります。

さらに、要求に対応するための変更を加える場合、データパイプライン全体への影響を考慮しなければならず、そのためシステム全体の変更が遅れてしまうことになります。

業務を知らないデータ管理チーム

データ管理を行うチームは高度な技術的専門性を持っていますが、しばしば、彼らが管理するデータの背後にあるビジネスドメインに関する深い知識を欠いていることが多いです。このギャップは、データを利用したいビジネス部門(営業やマーケティングなど)とデータ管理チームとの間にコミュニケーションの障害を生じさせます。その結果、ビジネス部門の真の要求や動機を理解しないままデータ提供が行われることになり、要求の誤解が生じ、それがビジネス価値の最大化を妨げる要因となります。

所有権と品質の問題

データを生成している事業部門は、そのデータの最終的な消費者やデータ管理チームから切り離されています。そのため、最終消費者やデータ管理チームは、データの品質や意味を判断するための十分な能力を欠いていることが多いです。データのクレンジングや変換といった品質向上の作業はすべて中央のデータ管理チームに集中しますが、これらのチームはデータを完全に理解するためのコンテキストを欠いていることがあります。

このような構造的な問題は、データ品質の低下を招き、データプラットフォーム全体への信頼の欠如を引き起こします。その結果、膨大なコストをかけて構築されたデータウェアハウスやデータレイクが、誰にも信頼されず、十分に活用されない「ブラックボックス」と化してしまうのです。

まとめ

データメッシュの考え方を整理するにあたり、今回はデータメッシュの基本的な概念とその提唱者、そして現在の中央集権型アーキテクチャが抱える課題についてまとめました。データメッシュは、これらの課題を解決するための新しいアプローチとして注目されています。具体的には、中央集権的なデータプラットフォームに依存することによるボトルネックや、ビジネス部門とのコミュニケーションギャップなど、従来のアーキテクチャが引き起こしている問題を解消し、より効率的で柔軟なデータ管理を目指しています。

次回以降の記事では、データメッシュアーキテクチャの基本原則についてさらに掘り下げて解説していきたいと考えています。データメッシュがどのように分散型のデータ管理を実現し、どのようにビジネスドメインに密着したデータ運用を可能にするのか、その具体的な仕組みと利点を詳しくご紹介する予定です。引き続き、データメッシュの実装における重要なポイントや課題にも触れていきますので、よければご一読いただけますと幸いです。