最近、「n8n(エヌエイトエヌ)」というサービス名をよく見かけるようになりました。
正直なところ、「このサービスは一体何なんだ?」という疑問から調べ始めたのですが、調べるうちに興味が湧いてきたので、今回はその内容を記事にまとめてみたいと思います。
- n8nとは?
- n8nの構築手順
- n8nの魅力
- n8nのビジネスでの活用アイデア
n8nとは
2019年に公開された、オープンソースのワークフロー自動化ツールです。 n8nは、セルフホスティング(自前サーバーでの運用)と、公式のクラウドサービスであるn8n Cloud(SaaS)の両方に対応しています。
私が思うn8nの最大の強みは、完全にオープンソースでセルフホスティングが可能である点と、高い拡張性にあると感じています。
セルフホスティングがもたらす利点
決してクラウドサービスが悪いというわけではありません。クラウドサービスは実行環境の準備をしなくて良い、サービスのアップデートを意識しなくてよいというメリットがあります。私がこの記事で言いたのは、他の類似サービスと比べたときの違いとして、n8n強みとして持っている機能面です。それが、セルフホスティングが可能であるという点です。
プライベート環境でのデータ管理
セルフホスティングにより、完全にプライベートな環境下での運用が可能になります。 個人情報や機密情報など、厳格な規制に準拠しなければならない場合において、大きなメリットとなります。
日本企業では、近年SaaSサービスを利用するケースが増えている印象がありますが、それでも機密情報の取り扱いに関しては常に慎重さが求められます。この点で、n8nのセルフホスティング対応は安心感を提供できる要素になると考えています。
コスト効率化
n8n のクラウドサービスはワークフローの実行回数に応じた従量課金制ですが、セルフホスティング版では、実行回数は無制限(ただしサーバーリソースに依存)です。
実行回数が多い場合、劇的にTCO(総所有コスト)を削減できる可能性があります。自動化の規模が大きくなるほど、クラウドサービスではコストが予測しにくくなりますが、セルフホスティングであれば、コストを安定させつつスケーラブルな運用が実現できます。
拡張性の高さ
n8nは、ノードベースのGUIでワークフローを構築できるローコード開発ツールです。400以上の統合機能が標準搭載されており、さまざまなAPIやサービスと連携が可能です。
さらに、HTTPノードやJavaScript/Pythonによるカスタムコードの記述にも対応しており、公開APIを持つあらゆるサービスと柔軟に連携できます。
また、独自のカスタムノードをGUI上で作成できるため、特定の業務ロジックや社内システムとの深い統合も可能です。これにより、自動化の適用範囲を無限に広げることができます。
Dockerで始める n8n:コミュニティ版セルフホステッド環境の構築
docker-compose.yml の設定例は以下のとおりです。
version: '3.8' services: n8n: image: n8nio/n8n:latest ports: - "5678:5678" environment: - N8N_ENCRYPTION_KEY=<安全なランダムキー> # 必ず変更してください - TZ=Asia/Tokyo - WEBHOOK_URL=https://your.domain.com/ # 必ず変更してください - N8N_BASIC_AUTH_ACTIVE=true - N8N_BASIC_AUTH_USER=admin # 必ず変更してください - N8N_BASIC_AUTH_PASSWORD=password # 必ず変更してください - DB_TYPE=postgresdb - DB_POSTGRESDB_HOST=db - DB_POSTGRESDB_PORT=5432 - DB_POSTGRESDB_DATABASE=n8n - DB_POSTGRESDB_USER=n8n - DB_POSTGRESDB_PASSWORD=n8n_pass # 必ず変更してください volumes: - n8n_data:/home/node/.n8n restart: unless-stopped depends_on: - db db: image: postgres:12 environment: - POSTGRES_DB=n8n - POSTGRES_USER=n8n - POSTGRES_PASSWORD=n8n_pass # 必ず変更してください volumes: - db_data:/var/lib/postgresql/data restart: unless-stopped volumes: n8n_data: db_data:
構築手順
今回は、上記ののyamlを元に構築手順を記述します。
docker-compose.yml を編集
上記の構成を参考にしつつ、自分の環境に合わせてプレースホルダー(例:<安全なランダムキー> や your.domain.com など)を適切な値に置き換えます。
Docker Composeでn8nとPostGreSQLのコンテナを起動する
docker-compose.ymlファイルを保存した場所に移動し、以下のコマンドを実行します:
sudo docker-compose up
これで、n8nおよびPostgreSQLコンテナが起動します。
n8nへアクセス
ブラウザで http://localhost:5678 にアクセスしてください。初回アクセス時にはアカウントの作成が求められます。
初期ユーザー作成とダッシュボード画面の表示
必要事項を入力すると、n8nのダッシュボード画面に遷移します。
実際に触ってみて感じたこと
環境構築後、1〜2時間ほど触ってみた感想を記載します。
誰が使うことを想定しているか?
GUIベースでローコード・ノーコードの開発が可能とはいえ、エンジニア向きの製品だと感じました。直感的な操作が難しい部分や、サービス連携にある程度の技術知識が求められる点があります。
また、公式ドキュメントが英語のみで提供されているため、日本のユーザーにとっては一定のハードルがあると感じました。
ビジネスでの活用アイデア
n8nの強みは、多様なサービスやAI技術と連携できる柔軟性です。SaaSサービスを組み合わせたアーキテクチャの構築時、連携部分での課題に対してn8nは有効な選択肢となります。
以下は、実際に他の方のブログなどで紹介されていたn8nの活用例です:
データ収集と分析の自動化
Webサイトから定期的にデータを取得し、JSONを解析してGoogleスプレッドシートに保存、最終的な結果をメールで通知。
顧客サポートの効率化
問い合わせフォームの内容をWebhookで受け取り、AIノードで感情分析を行い緊急度を判定。高緊急度の場合はSlack通知、それ以外はCRMに自動登録。
マーケティング自動化
SNS投稿の一括配信、リード管理(Typeform・Clearbitなど)や日次レポートの自動生成(Stripe → Google Data Studio → メール送信)など。
サプライチェーン最適化
DBから在庫情報を取得し、閾値を下回った場合にサプライヤーへ再注文メールを自動送信。
まとめ
n8nは、柔軟な連携性とセルフホスティングの安心感を兼ね備えた、非常にパワフルなワークフロー自動化ツールです。 エンジニアであれば、自社の業務効率化や自動化の第一歩として、試してみる価値は十分にあると感じました。 以下は、チュートリアルを見ながら作ったワークフローです。別の機会で紹介できればと思います。